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坐禅儀 現代語訳

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坐禅儀とは
坐禅の儀(作法・心構え)が
記されたモノです
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ここでは 大正大蔵経から

の時代(960年 – 1279年)の禅僧
慈覚大師こと
長蘆宗賾(ちょうろそうさく)禅師が編纂した
禅苑清規に記載されている
(長蘆慈覺賾禪師)坐禅儀」を
記載しています
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現在でも、臨済宗黄檗宗では
数カ所、違いがありますが
この坐禅儀が読まれています
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同じ禅宗でも
日本の曹洞宗では
道元禅師が記された
普勧坐禅儀
読まれているようです
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また
当院、大蔵院の開山である
中巌円月禅師にちなみ
勅修百丈清規に記載されている
坐禅儀」
記載しています
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この勅修百丈清規というのは
の時代(1271 – 1368年)に
洪州百丈山の住職を努めていた
東陽徳輝禅師が
皇帝トゴン・テムル(恵宗)の勅命を受け編集し
兄弟弟子の笑隠大訢禅師が校正した
清規(しんぎ、禅宗の集団規則)です
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大蔵院の開山 中巌円月禅師は
1325年に に渡り
百丈山東陽徳輝禅師に師事し
その法を嗣がれました
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この故事にちなみ
記載しています

大蔵院の庭の写真

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長蘆慈覺賾禅師
禅苑清規 坐禅儀


漢文
長蘆慈覺 賾禪師 坐禪儀
(大正大蔵経より)
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書き下し文
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現代語訳
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参考資料
禅の語録16 筑摩書房(坐禅儀)
禅と悟り(坐禅儀)
web智光院(坐禅儀)
鉄舟会(坐禅儀提唱)

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學般若菩薩
般若を学ぶ菩薩
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真理を得る智慧を学ぶ求道者というのは
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先當起大悲心 發弘誓願
先(ま)ず當(まさ)に大悲心(だいひしん)を起こし
弘誓願(ぐせいがん)を発し
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まず大いなる慈悲の心を起こし
四弘誓願を発し
.
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精修三昧 誓度衆生
三昧を精(くわ)しく修め
衆生を度(ど)すことを誓い
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集中して精神が統一した境地をくわしく修め
生命あるモノを悟りの境地へ済度することを誓って
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不爲一身 獨求解脱爾
一身の為に
独り解脱を求めざるべし
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自分ひとりの身の為の
独りだけの解脱を求めるべきではない
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乃 放捨諸縁 休息萬事
乃(すなわ)ち
を放捨(ほうしゃ)し
万事を休息
.
そこで 諸々の関わりを放り捨て
あらゆる事を休息し
.
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身心一如 動靜無間
身心一如にして
動静(どうじょう)に間(へだ)てなし
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身体と心を一つにして
動く時と静かにしている時を 分け隔てない

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量其飮食 不多不少
其の飲食(おんじき)を量(はか)りて
多からず
少なからず
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飲食する量を計り
多過ぎたり

少な過ぎたりしない
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調其睡眠 不節不恣
其の睡眠を調(ととの)えて
節(はぶ)かず
恣(ほしいまま)にせず
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睡眠を調え
節約して取ることも

ほしいままに取ることもしない
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欲坐禪時
坐禅を欲する時は
.
坐禅をしようとする時は
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於閑靜處厚敷坐物
閑靜なる処(ところ)に於いて
坐物(ざもつ)を厚く敷き
.
閑静な場所に
座蒲団を厚く敷いて
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寛繋衣帶令威儀齊整
寛(ゆる)く衣帯(えたい)を繋(か)け
威儀斉整(せいさい)なら令(し)め
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衣や帯などで繋がれた)
服装をゆるめ
威儀を整えなさい
.
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然後結加趺坐
然(しか)る  結跏趺坐せよ
.
そうした後 結加(けつか)趺坐で坐りなさい
.
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先以右足安左髀上
先(ま)ず右足を以て
左髀(ひだりもも)の上に安じ
.
まずは右足を
左の腿の上に安置
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左足安右髀上
左足を
右髀(みぎもも)の上に安ぜよ
.
左足を

右の腿の上に安置させなさい
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或半趺坐亦可
或いは
半趺坐(はんかざ)も 亦(ま)た可なり
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あるいは

半跏趺坐で坐ってもよい
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但以左足壓右足而已
但(た)だ 左足を以て
右足を圧(お)す而已(のみ)
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(この場合は)ただ左の足で
右の脚を圧すだけである
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次以右手安左足上
次に 右手を以て
左足の上に安じ
.
次に(上に向けた)右手を
左足の上に安置する
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左掌安右掌上
左の掌(たなごころ)を
右の掌(たなごころ)の上に安じ
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(上に向けた)左の手のひらを

右の手のひらの上に安置する
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以兩手大拇指面相拄
両手の大拇指(だいぼし)の
面(おもて)を以て相(あい)拄(ささ)え
.
両手の親指の
面で互いに支える
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徐徐擧身前向
徐徐として身を挙げ (まえ)(む)
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徐々に身体を挙げ 前を向き
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復左右搖振
左右に搖振(ようしん)するを復(ふく)す
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ゆらゆらと左右に動かす動作を反復する
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乃正身端坐
乃(すなわ)ち
身を正して 端坐(たんざ)せよ
.
そうして

身体を正し 威儀を正して坐りなさい
.
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不得左傾右側 前躬後仰
左に傾(かたむ)き
右に側(そばた)ち
前に躬(かが)まり
後に仰ぐことを 得ざれ
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左に傾いたり

右に斜めになったり
前にかがんだり
後ろに反って仰ぐことがないように
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令腰脊頭項骨節相拄
(こし) (せ) (とう) (こう)(こっ)(せつ)をして
相(あい)拄(ささえ)え
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腰・背中・頭・首の骨筋で

互いに支え
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状如浮屠
状(かたち) 浮屠(ふと)の如くならしめよ
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その形状を 仏塔の様にする
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又不得聳身太過
又た
身を聳(そび)えること
太(はなは)だ過ぎて
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また
身体をそそり立たせようとする
度が過ぎて
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令人氣急不安
人をして気急(ききゅう)
不安なら令(し)むることを得(え)ざれ
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人の気を急かしたり

不安にさせることが無いように
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要令 耳與肩對 鼻與臍對
耳と肩とを対し
鼻と臍(へそ)とを対し
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耳と肩とを(水平に)相対させ
鼻とヘソとを(垂直に)相対させ
.
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舌拄上腭 唇齒相著
舌は上腭(うわあご)を拄(ささ)え
唇(くちびる)と歯を
相い著(つ)け令(し)むることを要す
.
舌は上アゴを支え
唇と歯を
互いにつけさせる必要がある
.
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目須微開 免致昏睡
目は須(すべ)からく微(かす)かに開(あ)けるべし
昏睡致(いた)すを免れよ 
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目は かすかに開ける必要があり
意識を失い眠り込む状態になることから(まぬが)れよ

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若得禪定 其力最勝
若(も)し禅定を得れば
其の力  最勝(さいしょう)なり
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もし禅定を得ることができれば
其の効力は最も勝れたものである
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古有習定高僧 坐常開目
古(いにしえ)えの習定(しゅうじょう)の高僧 有り
坐して 常に 目を開(ひら)く
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昔、禅定に習熟した
高徳の僧たちが有り
坐るときは 常に目を開いていた

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向法雲圓通禪師亦訶人閉目坐禪
向(さき)の
法雲円通(ほううんえんつう)禅師も亦(また)
人の 目を閉(と)じて 坐禅するを訶(せ)め
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以前、法雲寺に居た円通禅師もまた
人が 目を閉じて坐禅することを叱り
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以爲黒山鬼窟
(もっ)て黒山(こくさん)の鬼窟(きくつ)と(な)
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(目を閉じて坐禅することを)以て

黒山の死霊の洞窟(黒山鬼窟)と見なした
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蓋有深旨 達者知焉
蓋(けだ)し深旨(じんし)有り
達者(たっしゃ)焉(こ)れを(し)
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(この言葉には)確かに深い意味が有る
(坐禅の)熟達者はコレを知っている
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身相既定氣息既調
身相(しんそう) (すで)に定(さだ)まり
気息(きそく) (すで)に調(ととの)い
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身体の様相を まったく安定させ
息づかいを すっかり調え
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然後寛放臍腹
然(しか)して
臍(さい)腹(ふく)を寛放(かんほう)し
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そうした後

へそ・腹をく放つ
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一切善惡都莫思量
一切(いっさい)善悪 都(すべ)て
思量(しりょう)すること莫(なか)れ
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一切の善悪など
 あらゆることを
思い量るな
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念起即覺
念(ねん)起(おこ)らば
即(すなわ)ち 覚(かく)せよ
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妄念が起きたときは
即座に 自覚せよ
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覺之即失
之(これ)を覚すれば
即(すなわ)ち 失す
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之を自覚したとき
即座に 消失する
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久久忘縁自成一片
久久(きゅうきゅう)に(えん)を忘(ぼう)ずれば
自(おのず)ら一片(いっぺん)(な)
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長い間 諸々の縁を忘れれば
自然と一かけらに成るだろう
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此坐禪之要術也
此(こ)れ坐禅(ざぜん)要術(ようじゅつ)なり
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これが坐禅の重要な方法である
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竊爲坐禪乃安樂法門
窃(ひそ)かに思い為(な)すに
坐禅(ざぜん)は 乃(すはわ)ち安楽(あんらく)法門(ほうもん)なり
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ひそかに思うのだが
坐禅は つまり安楽の境地に入る法門である
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而人多致疾者 蓋不善用心故也
而(しか)るに (ひと)(おお)く疾(やまい)を致(いた)すは
蓋(けだ)し 用心(ようじん)善くせざるが(ゆえ)なり
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しかし(修行している)人の多くが病気になるのは
思うに心がけを (よ)くしていないのが原因だろう
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若善得此意 則自然四大輕安精神爽利
若(も)し(よ)(こ)(い)(え)れば 則(すなわ)ち
自然に四大 軽安(きょうあん)精神 爽利(そうり)
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もし善くこの極意を獲得すれば
自然と 人の肉体は軽くなり 精神は爽やかになり
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正念分明法味資神
正念 分明(ふんみょう)にして
法味 (しん)を資(たす)け
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正しい思念が明白になり
仏法の深い味わいが精神を助け
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寂然清樂
寂然(じゃくねん)として清楽(せいらく)とならん
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静かで 清らかな安楽の境地を楽めるだろう
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若已有發明者 可謂如龍得水似虎靠山
若(も)し已(すで)に発明(はつみょう)すること(あ)らば
(りゅう)(みず)(う)るが如く
(とら)(やま)に靠(よ)るに(に)たりと謂(い)う(べ)
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(このような道理を)

もしすでに発見し明らかにして有れば
“水を得た龍に匹敵するもの“

“山に寄る虎に酷似するもの”と言うべきであり
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若未有發明者 亦乃因風吹火 用力不多
若(も)し未(いま)だ発明(はつみょう)すること(あ)らざるも
(ま)た乃(すなわ)ち (かぜ)(よ)って(ひ)(ふ)けば
力(ちから)を(もち)いること(おお)からず
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もしまだ発見し明らかにして無くとも

風をよりどころに 火を吹き放つようなもので
(自然と燃え広まるものだから 後は)

努力を用いることは多くない
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但辨肯心 必不相賺
但(た)だ肯心(こうしん)を辨(べん)ぜよ
(かなら)ず 相(あい)賺(だま)さず
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ただ 心が納得し肯定するところを 明確に見分けなさい
(それは)決して(あなたを)騙すことが無い

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然而道高魔盛逆順萬端
然(しか)れども 而(しこ)うして
(みち)(たか)ければ (ま)(さか)んにて
逆順(ぎゃくじゅん)万端(ばんたん)なり
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しかし それに加えて
道を歩み(自らが)高まるほどの勢いも盛んになり
逆境順境、あらゆる事柄が起こる
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但能正念見前 一切不能留礙
但(た)だ能(よ)く正念(しょうねん)現前(げんぜん)すれば
一切 留礙すること能(あた)わず
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ただ 正しい念を目の前に現すことが出来れば
一切 留めらたり、妨げられることは無い

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如楞嚴經 天台止觀 圭峯修證儀 具明魔事
楞厳経天台摩訶止観
圭峯(ほう)(しゅ)(しょう)(ぎ)(ごと)きは
具(つぶさ)に魔事(まじ)を(あ)かす
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(りょう)(ごん)(きょう)天台(てんだい)(し)(かん)

(けい)禅師の円覚経道場修証義などは
詳細に 魔事について説明している

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預備不虞者 不可不知也
預(あらかじ)め不虞(ふぐ)に備(そな)うる者は
(し)らずべからざるなり
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前もって 思いがけない事態に備える者は
知っていなければならない

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若欲出定 徐徐動身安詳而起 不得卒暴
若(も)し定(じょう)を(い)でんと(ほっ)せば
徐徐(じょじょ)(み)(うご)かし 安詳として(た)
卒暴(そつぼう)なることを(え)
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もし禅定を出たいと欲したときは
徐々に身体を動かし 落ち着いて立ち上がりなさい
軽率・乱暴にしてはならない
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出定之後 一切時中常依方便 護持定力如護嬰兒
出定(しゅつじょう)の(あと)
一切(いっさい)時中(じちゅう)  (つね)方便(よ)
定力護持すること嬰児を護(まも)るが(ごと)くせよ
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禅定を出た後も
一切の時間 常に 方便をよりどころにして
定力(じょうりき)(ご)しなさい ちょうど赤ん坊を護るように
.
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即定力易成矣
即(すなわ)ち
定力 成り易(やす)し
.
そうすれば
定力の完成は容易だろう
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夫禪定一門最爲急務
(そ)れ 禅定一門(いちもん)
(もっと)急務なり
.
そもそも 禅定の一門は

最初に取り組むべき急務である
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若不安禪靜慮 到遮裏總須茫然
(も)し 安禅 静慮静慮ならずんば
這裏(しゃりり)に(いた)って
総須(すべ)て(ぼう)(ぜん)たるべし
.
もし一心に坐禅して 心を静められなければ
ここに到った(一大事の・ギリギリの)とき

茫然となるしかない
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所以探珠宜靜浪
所以(ゆえん)に 珠(たま)を(さぐ)るには
宜(よろ)しく浪(なみ)を(しず)むべし
.
そのような理由から(水中の)珠を探すときは

波を静めるとよい
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動水取應難
(みず)(うご)かせば
(と)ること応(まさ)に難(かた)かるべし
.
水を動かせば
取ることが当然難しくなる
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定水澄清心珠自見
定水(じょうすい)澄清(ちょうせい)なれば
心珠(しんじゅ)自(おのず)から現(げん)ず
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水が安定する時(水は)清く澄むのだから
心の珠は 自然に現れる
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故圓覺經云 無礙清淨慧 皆依禪定生
(ゆえ)に 円覚経(い)わく
無礙清浄の恵(え)は
(み)禅定(よ)って(しょう)ずと
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その故に (えん)(がく)は云っている

障礙の無い 清浄な智慧は
皆 禅定をよりどころとして生まれ出る」と
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法華經云 在於閑處修攝其心 安住不動如須彌山
法華経(ほけきょう)(い)わく
閑処(かんじょ)に(あ)って
(そ)(こころ)を修摂(しゅしょう)し
安住(あんじゅう)して不動(ふどう)なること須弥山(ごと)くせよと
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法華経は云っている

「閑静な場所に滞在し 其の心を修め 摂生
安住して須弥山のように動くな」と
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是知超凡越聖必假靜縁
是(ここ)に(し)んぬ
凡(ぼん)を(こ)え聖(せい)を(こ)えるは
(かなら)ず静縁(じょうえん)を(か)
.
ここに知った
凡(迷い)や聖(悟り)を超越した境地に到るには
必ず寂静との仮借しなければならないことを
.
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坐脱立亡須憑定力
(ざ)して脱(だっ)し (た)ちて亡(ぼう)ずは
須(すべ)からく 定力(じょうりき)に憑(よ)るべし
.
(生死自由の境地に達した禅の祖師たちのように)
坐ったまま死んだり、立ったまま死ぬ(坐脱立亡)には
定力に憑らなければならないことを
.
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一生取辦尚恐蹉跎
一生 取辦(しゅべん)するも 尚(な)お
蹉跎たらんことを(おそ)
.
一生をかけて取り組んでも なお

機会を失うことを恐れる
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況乃遷延將何敵業
況(いわ)んや乃(すなわ)ち遷延(えん)せば
(なに)(も)ってか 業(ごう)に(てき)せん
.
まして 時間を遷したり伸ばしたりしていて
どうやって宿業と敵対しようというのか

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故古人云
(ゆえ)に 古人(こじん)云(い)わく
.
だから 昔の人はこう言った

.
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若無定力甘伏死門
(も)し 定力(な)くんば
(あまん)じて死門(しもん)(ふ)
.
「もしが定力が無ければ
死の関門に臨むとき 甘んじて降伏するしかなく

.
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掩目空歸宛然流浪
(め)(おお)いて 空(むな)しく(かえ)
宛然(えんねん)として流浪(るろう)せんと
.
目をおおって空しく(もとの世界へ)帰るしかない

まるで流浪するように」と
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幸諸禪友三復斯文
幸(さいわ)いに 諸(しょ)禅友(ぜんゆう)
斯(こ)の文(ふみ)を三復(さんふく)せよ
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幸いにして 諸々の禅の友人たちよ
この文を再三再四 反復して読みなさい

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自利利他同成正覺
自利(じり)利他(りた)
(おな)じく正覚を成(じょう)ぜよ
.
自利利他を図り実践し
皆で共に正しい悟りを完成させなさい
.
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侘助椿の写真

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勅修百丈清規 坐禅儀

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漢文
長蘆慈覺 賾禪師 坐禪儀
.
勅修百丈清規 坐禅儀
(大正大蔵経より)
.
書き下し文
勅修百丈清規 坐禅儀
.
現代語訳
勅修百丈清規 坐禅儀
.
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學般若菩薩
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夫學般若菩薩
(そ)れ 般若を学ぶ菩薩
.
そもそも真理を見抜く智慧を学ぶ求道者というのは
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先當起大悲心 發弘誓願
.
起大悲心 發弘誓願
大悲心(だいひしん)を起こし
弘誓願(ぐせいがん)を発し
.
大いなる慈悲の心を起こし
四弘誓願を発し
.
.
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.
精修三昧 誓度衆生
.
精修三昧 誓度衆生
三昧を精(くわ)しく修め
衆生を度(ど)すことを誓い
.
集中して精神が統一した境地をくわしく修め
生命あるモノを悟りの境地へ済度することを誓って
.
.
.
.
不爲一身 獨求解脱爾
.
不爲一身 獨求解脱
一身の為に
独り解脱を求めざるべし
.
自分ひとりの身の為の
独りだけの解脱を求めるべきではない
.
.
.
.
乃 放捨諸縁 休息萬事
.
放捨諸縁休息萬念
を放捨(ほうしゃ)し
万念を休息
.
そこで 諸々の関わりを放り捨て
あらゆる思念を休み
.
.
.
.

身心一如 動靜無間
.
身心一如 動靜無間
身心一如にして
動静(どうじょう)に間(へだ)てなし
.
身体と心を一つにして
動く時と静かにしている時を 分け隔てない

.
.
.
.
量其飮食 不多不少
.
量其飮食
其の飲食(おんじき)を量(はか)り
.
飲食する量を計り
.
.
.
.
調其睡眠 不節不恣
.
調其睡眠
其の睡眠を調(ととの)う
.
睡眠を調える
.
.
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欲坐禪時 於閑靜處厚敷坐物
.
於閒靜處厚敷坐物
閑靜なる処(ところ)に於いて
坐物(ざもつ)を厚く敷き
.
閑静な場所に
座蒲団を厚く敷
.
.
.
.
寛繋衣帶令威儀齊整
然後結加趺坐
先以右足安左髀上
左足安右髀上
或半趺坐亦可
.
結跏趺坐 或半跏趺
結跏趺坐
或いは 半趺坐(はんかざ)す
.
結加(けつか)趺坐
あるいは 半跏趺坐で坐る
.
.
.
.
但以左足壓右足而已
次以右手安左足上
左掌安右掌上
.
以左掌安右掌上
左の掌(たなごころ)を
右の掌(たなごころ)の上に安じ
.
(上に向けた)左の手のひらを

右の手のひらの上に安置する
.
.
.
.
以兩手大拇指面相拄
.
兩大拇指相拄
両手の大拇指(だいぼし)を相(あい)拄(ささ)え
.
両手の親指を 相互に支え合わせ
.
.
.
.
徐徐擧身前向
復左右搖振
乃正身端坐
.
正身端坐
身を正し 端坐(たんざ)す
.
身体を正し 
威儀を正し 坐る
.
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要令 耳與肩對 鼻與臍對
舌拄上腭 唇齒相著
.
令耳與肩對 鼻與臍對
舌拄上腭 唇齒相著
耳と肩とを対し
鼻と臍(へそ)とを対し
舌は上腭(うわあご)を拄(ささ)え
唇(くちびる)と歯を
相い著(つ)け令(し)むることを要す
.
耳と肩とを(水平に)相対させ
鼻とヘソとを(垂直に)相対させ
舌は上アゴを支え
唇と歯を
互いにつけさせる必要がある
.
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目須微開 免致昏睡
.
目須微開 免致昏睡
目は須(すべ)からく微(かす)かに開(あ)けるべし
昏睡致(いた)すを免れよ 
.
目は かすかに開ける必要があり
意識を失い眠り込む状態になることから(まぬが)れよ

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若得禪定 其力最勝
.
若得禪定 其力最勝
若(も)し禅定を得れば
其の力  最勝(さいしょう)なり
.
もし禅定を得ることができれば
其の効力は最も勝れたものである
.
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.
.
古有習定高僧 坐常開目
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古習定高僧 坐常開目
古(いにしえ)えの習定(しゅうじょう)の高僧は
坐して 常に 目を開(ひら)く
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昔の禅定に習熟した高徳の僧たちは
坐るとき 常に目を開けていた

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向法雲圓通禪師亦訶人閉目坐禪
以爲黒山鬼窟
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法雲圓通禪師呵人閉目坐禪
謂黒山鬼窟
法雲円通(ほううんえんつう)禅師も亦(また)
人の 目を閉(と)じて 坐禅するを訶(せ)め
黒山(こくさん)の鬼窟(きくつ)と(な)
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以前、法雲寺に居た円通禅師もまた
人が 目を閉じて坐禅することを叱り
(目を閉じて坐禅することを)

黒山の死霊の洞窟(黒山鬼窟)と見なした
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蓋有深旨 達者知焉
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有深旨矣
蓋(けだ)し深旨(じんし)有り
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(この言葉には)確かに深い意味が有る
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身相既定氣息既調
然後寛放臍腹
一切善惡都莫思量

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一切善惡都莫思量
一切(いっさい)善悪 都(すべ)て
思量(しりょう)すること莫(なか)れ
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一切の善悪など
 あらゆることを
思い量るな
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念起即覺
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念起即覺
念(ねん)起(おこ)らば
即(すなわ)ち 覚(かく)せよ
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妄念が起きたときは
即座に 自覚せよ
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覺之即失
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常覺 不昧不昏不散
常に覚(かく)すれば
昧(くら)((くら)からず
昏(くら)(くら)まず
散らず
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常に 自覚すれば
道理にくらくなく
昏迷することもなく
心の集中が散ることもない
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久久忘縁自成一片
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萬年一念 非斷非常
(まん)(ねん)一念(いちねん)
断に非ず 常に非ず
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万年もの時間を一瞬ととらえる 無心の境地は
断見でも 常見でもない
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此坐禪之要術也
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此坐禪之要術也
此(こ)れ坐禅(ざぜん)要術(ようじゅつ)なり
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これが坐禅の重要な方法である
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竊爲 坐禪乃安樂法門
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坐禪乃安樂法門
坐禅(ざぜん)は 乃(すはわ)ち安楽(あんらく)法門(ほうもん)なり
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坐禅は つまり安楽の境地に入る法門である
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而人多致疾者 蓋不善用心故也
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而人多致疾者 蓋不得其要
而(しか)るに
(ひと)(おお)く疾(やまい)を致(いた)すは
蓋(けだ)し 其の要を得ざるなり
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しかし
(修行している)人の多くが 病気になるというのは
つまり 坐禅の要術を得ていないからだ
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若善得此意 則自然四大輕安 精神爽利
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得其要 則自然四大輕安 精神爽利
其の要を(え)れば 則(すなわ)ち
自然に四大 軽安(きょうあん)
精神 爽利(そうり)
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其の坐禅の要術を体得するなら
自然と 人の肉体は軽くなり
精神は爽やかになり
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正念分明 法味資神 寂然清樂
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法味資神 寂而常照
法味 (しん)を資(たす)け
寂にして而も常照(じょうしょう)なり
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仏法の深い味わいが精神を助け
静寂でありながら 常に照らし続ける
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若已有發明者 可謂如龍得水似虎靠山
若未有發明者 亦乃因風吹火 用力不多

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寤寐一致 生死一如
寤寐 一致し 
生死 一如なり
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目覚めているときと 寝ているときが 一つになり
生きることと 死ぬことが 一つになる
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但辨肯心 必不相賺
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但辦肯心 必不相賺
但(た)だ肯心(こうしん)を辨(べん)ぜよ
(かなら)ず 相(あい)賺(だま)さず
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ただ 心が納得し肯定するところを 明確に見分けなさい
(それは)決して(あなたを)騙すことが無い

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然而 道高魔盛 逆順萬端
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然 恐道高魔盛 逆順萬端
然(しか)れども 恐れるは
(みち)(たか)ければ (ま)(さか)んなること
逆順(ぎゃくじゅん)万端(ばんたん)なり
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しかし 恐れるのは
道を歩んで高まるほどの勢いも盛んになること

逆境順境、あらゆる事柄が起こるだろう
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但能正念見前 一切不能留礙
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若能正念現前 一切不能留礙
若(も)し能(よ)く正念(しょうねん)現前(げんぜん)すれば
一切 留礙すること能(あた)わず
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もし正しい念を 目前に出現させることが出来れば
一切 留めらたり、妨げられることは無い

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如楞嚴經 天台止觀 圭峯修證儀 具明魔事

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如楞嚴經 天台止觀 圭峯修證儀 具明魔事
楞厳経天台摩訶止観
圭峯(ほう)(しゅ)(しょう)(ぎ)(ごと)きは
具(つぶさ)に魔事(あ)かす
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(りょう)(ごん)(きょう)天台(てんだい)(し)(かん)

(けい)禅師の円覚経道場修証義などは
詳細に 魔事について説明している

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預備不虞者 不可不知也
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皆自心生非由外有 定慧力勝魔障自消矣
(み)な (こころ)より(しょう)じ (そと)より(あ)るに(あら)
定慧(じょうえ)の(ちから)魔障(ましょう)に勝(まさ)り
(おのず)から(き)えん
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皆 心より生じるもので外に(何か)有るわけではない
禅定・智慧の力は 悪魔の障害より優れ
(それは)自然に消えてい
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若欲出定 徐徐動身 安詳而起 不得卒暴
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若欲出定 徐徐動身 安詳而起 不得卒暴
若(も)し定(じょう)を(い)でんと(ほっ)せば
徐徐(じょじょ)(み)(うご)かし 安詳として(た)
卒暴(そつぼう)なることを(え)
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もし禅定を出たいと欲したときは
徐々に身体を動かし 落ち着いて立ち上がりなさい
軽率・乱暴にしてはならない
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出定之後 一切時中常依方便 護持定力 如護嬰兒
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出定之後 常作方便 護持定力
出定(しゅつじょう)の(あと)
一切(いっさい)時中(じちゅう)  (つね)方便
定力を護持せよ
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禅定を出た後も
一切の時間 常に方便を よりどころにして
定力(じょうりき)(ご)しなさい
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即定力易成矣
夫禪定一門最爲急務

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諸修行中 禪定爲最
諸(もろもろ)の修行中
禅定最と為す
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様々な種類の修行がある中で
禅定を最たるものと為す
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若不安禪靜慮 到遮裏總須茫然
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若不安禪靜慮 三界流轉觸境茫然
(も)し 安禅 静慮静慮ならずんば
三界を流転し
境に触れ
(ぼう)(ぜん)たるべし
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もし一心に坐禅して 心を静められなければ
生まれ変わり死に変わって三界を 迷い続けたり
外部の境界に触れる度
(心が乱れ)茫然となるしかない
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所以探珠宜靜浪
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所以道探珠宜靜
所以(ゆえん)に 珠(たま)を(さぐ)るには
宜(よろ)しく浪(なみ)を(しず)むべし
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そのような理由から(水中の)珠を探すときは

波を静めるのがよい
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動水取應難
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浪動水取應難
浪、(うご)かせば
(と)ること応(まさ)に難(かた)かるべし
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浪が水を動かすとき
取ることは 当然難しくなる
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定水澄清 心珠自見
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定水澄清 心珠自現
定水(じょうすい)澄清(ちょうせい)なれば
心珠(しんじゅ)自(おのず)から現(げん)ず
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水が安定する時(水は)清く澄むのだから
心の珠は 自然に現れる
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故圓覺經云 無礙清淨慧 皆依禪定生
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故圓覺經云 無礙清淨慧 皆依禪定生
(ゆえ)に 円覚経(い)わく
無礙清浄の恵(え)は
(み)禅定(よ)って(しょう)ずと
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その故に (えん)(がく)は云っている

障礙の無い 清浄な智慧は
皆 禅定をよりどころとして生まれ出る」と
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法華經云 在於閑處修攝其心 安住不動如須彌山
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法華經云 在於閒處修攝其心 安住不動如須彌山
法華経(ほけきょう)(い)わく
閑処(かんじょ)に(あ)って
(そ)(こころ)を修摂(しゅしょう)し
安住(あんじゅう)して不動(ふどう)なること須弥山(ごと)くせよと
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法華経は云っている

「閑静な場所に滞在し 其の心を修め 摂生
安住して須弥山のように動くな」と
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是知超凡越聖必假靜縁
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是知超凡越聖必假靜縁
是(ここ)に(し)んぬ
凡(ぼん)を(こ)え聖(せい)を(こ)えるは
(かなら)ず静縁(じょうえん)を(か)
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ここに知った
凡(迷い)や聖(悟り)を超越した境地に到るには
必ず寂静との仮借しなければならないことを
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坐脱立亡 須憑定力
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坐脱立亡 須憑定力
(ざ)して脱(だっ)し (た)ちて亡(ぼう)ずは
須(すべ)からく 定力(じょうりき)に憑(よ)るべし
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坐ったまま死んだり 立ったまま死ぬのは
定力に憑らなければならない
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※生死自由の境地に達した禅の師匠たちは
坐脱立亡することがあった

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一生取辦尚恐蹉跎
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一生取辦尚恐蹉跎
一生 取辦(しゅべん)するも 尚(な)お
蹉跎たらんことを(おそ)
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一生をかけて取り組んでも なお

機会を失うことを恐れる
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況乃遷延將何敵業
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況乃遷延將何敵業
況(いわ)んや乃(すなわ)ち遷延(えん)せば
(なに)(も)ってか 業(ごう)に(てき)せん
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まして 時間を遷したり伸ばしたりしていて
どうやって宿業と敵対しようというのか

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故古人云
若無定力 甘伏死門
掩目空歸 宛然流浪
幸諸禪友 三復斯文

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幸諸禪友 三復斯文
幸(さいわ)いに 諸(しょ)禅友(ぜんゆう)
斯(こ)の文(ふみ)を三復(さんふく)せよ
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幸いにして 諸々の禅の友人たちよ
この文を再三再四 反復して読みなさい

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自利利他 同成正覺
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自利利他 同成正覺
自利(じり)利他(りた)
(おな)じく正覚を成(じょう)ぜよ
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自利利他を図り実践し
皆で共に正しい悟りを完成させなさい
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明石の禅寺 大蔵院
経典 記事一覧

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金剛般若経
般若心経(大本・小本)梵語
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観音経
延命十句観音経
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大悲呪
開甘露門
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消災呪
仏頂尊勝陀羅尼
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坐禅儀
証道歌
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中峰和尚座右の銘
興禅大燈国師遺戒
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白隠禅師坐禅和讃.
雲水和讃
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© 2022 kenkozan Daizoin

般若心経
大悲呪
昔の本堂の様子と 新本堂を再建する様子

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