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証道歌 現代語訳


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永嘉大師 証道歌(ようかたいし しょうどうか)

証道歌とは
唐の時代の禅僧
永嘉 玄覚(ようか げんかく)大師が
作ったとされる漢詩です
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二六七句で 禅の要訣が表現されています
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敦煌文献から発見され文献の中に
証道歌と同じ内容の書物がありますが
その表題は『禅門秘要訣』です
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永嘉玄覚大師(665~713)は
唐の時代の僧侶です
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初めに天台宗を学び
経蔵・律蔵・論蔵の
三蔵を修められました
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好んで 禅に打ち込まれ
その姿を見た人から
当代一の禅僧 曹渓の慧能禅師
会うことを勧められました
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慧能禅師の元を訪れ
問答を交わすと
驚くことに
その場で印可を受けられました
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そればかりか
慧能禅師は 永嘉玄覚大師を気に入り
一泊していくよう勧めたことから
人々は 永嘉玄覚大師を
「一宿覚(いっしゅくかく)」と
称しました
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永嘉大師 證道歌

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漢文(参照:大正大蔵経)
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(よ)(くだ)(ぶん)

現代語 意訳
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※出典経典など
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00~290の数字は
便宜をはかって付けています
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00
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君不見
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(きみ)()ずや

君は 見たことないか
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絶學無爲間道人

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絶学(ぜつがく)無為(むい)(かん)道人(どうにん)

もはや学ぶべきものが絶えた
無為の境地の (しず)かな
道人
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不除妄想不求眞
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妄想(もうそう)(のぞ)かず (しん)(もと)めず

妄想を除くこともなく
真理を求めることもない

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無明實性即佛性
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無明(むみょう)実性(じっしょう) (そく)仏性(ぶっしょう)
執着し妄想が起こる
この現象世界が
そのまま仏の本性である

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幻化空身即法身
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幻化(げんけ)空身(くうしん) (そく)法身(ほっしん)
幻のように変化する実体の無い身体が
そのまま真理そのものである

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法身覺了無一物
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法身(ほっしん)(かく)(りょう)すれば ()(いち)(もつ)

真如の理体を悟れば
執着するものが何一つ無い
自由自在の心境に至るだろう

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本源自性天眞佛
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本源(ほんげん)自性(じしょう) 天真(てんしん)(ぶつ)

根源的な存在の本質は
自然そのままの仏である
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五陰浮雲空去來
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五蘊(ごうん)浮雲(ふうん)は (くう)去來(きょらい)
人を構成する五つの構成要素は
浮雲のようなもので 空を去来する
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三毒水泡虚出沒
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三毒(さんどく)水泡(すいほう)は (きょ)出没(しゅつぼつ)

三つの毒(貧瞋痴)は
水泡のようなもので 虚しく出没する

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10
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證實相無入法
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実相(じっそう)(しょう)すれば (にん)(ほう)()

真実の有様を悟るとき
人も法(真理)も無い
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刹那滅却阿鼻業
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刹那(せつな)滅却(めっきゃく)す 阿鼻(あび)(ごう)

無間地獄に堕ちるような悪業も
一瞬のうちに滅するだろう

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若將妄語誑衆生
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()妄語(もうご)(もっ)て 衆生(しゅじょう)(まどわ)さば

もし嘘・偽りで
生きとし生けるものを惑わせば

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自招拔舌塵沙劫
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(みずか)(ばつ)(ぜつ)(まね)くこと 塵沙(じんしゃ)(ごう)ならん
自ら 計り知れない間
舌を抜かれ続ける事態を招くだろう
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頓覺了如來禪
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(とん)如来(にょらい)(ぜん)を (かく)(りょう)すれば
ただちに如来禅を悟るなら
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六度萬行體中圓
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六度(ろくど)(まん)(ぎょう) 体中(たいちゅう)(まどか)なり

六度万行体中に満ちて
生活の一部となる

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夢裏明明有六趣
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()()明明(めいめい)として(ろく)(しゅ)()

夢の世界では
明らかに六道を輪廻する苦の世界がある

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覺後空空無大千
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()めて(のち) 空空(くうくう)として (だい)(せん)()

悟った後の世界は空々としたもので
因果にとらわれる
有為の世界は無い

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無罪福無損益
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(ざい)(ふく)()く 損益(そんえき)()

罪業福徳も無く 損失も利益も無い

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20
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寂滅性中莫問覓
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寂滅(じゃくめつ)性中(しょうちゅう)に 問覓(もんみょく)すること()

涅槃の境地では
問い求めたりすることが無い

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比來塵鏡未曾磨
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()(らい)(じん)(きょう) (いま)(かつ)()さず

未だかつて磨かれることが無かった
(ちり)だらけの鏡を

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今日分明須剖析
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今日(こんにち) 分明(ぶんみょう)(すべか)らく剖析(ほうしゃく)すべし

今日 はっきり見極めがつくように
詳しく調べるといい

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神秀上座の偈
身是菩提樹 心如明鏡臺
時時勤佛拭 莫使有塵挨
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六祖慧能の偈
菩提本無樹 明鏡亦非台
本来無一物 何処惹塵埃

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誰無念誰無生
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(たれ)無念(むねん) (たれ)無生(むしょう)

誰が 無念無想なのか
誰が
無生なのか

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若實無生無不生
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()(じつ)に 無生(むしょう)なら 不生(ふしょう)()

もし本当に無生なら 不生も無い
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喚取機關木人問
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()(かん)木人(ぼくじん)(かん)(しゅ)して()

からくりの木製人形を招いて問うてみろ

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求佛施功早晩成
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(ほとけ)(もと)め (こう)(ほどこ)さば 早晚(いつか)(じょう)ぜん

仏を求め 功徳を施せば
いつか成道するだろう

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放四大莫把捉
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()(だい)(はな)って 把捉(はそく)すること(なか)

万物の構成要素(四大)への執着を放し
(とら)えようとするな

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寂滅性中隨飮啄
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寂滅(じゃくめつ)性中(しょうちゅう) (まにま)飲啄(おんたく)せよ

心安らぐ涅槃の中で
(まか)せるがまま 飲み(ついば)

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30
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諸行無常一切空
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諸行(しょぎょう)無常(むじょう)にして 一切(いっさい)(くう)なり

因縁によって起こる現象は
常に変化するものであり

全てはである

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即是如來大圓覺
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(すなわ)()れ (にょ)(らい)(だい)(えん)(がく)

即ちこれが
如来の雄大にして円満な悟りである

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決定説表眞僧
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(けつ)(じょう)(せつ)は (しん)(そう)(あらわ)

(信じて疑いのない)
決定した信念で法を説くことは
真の僧侶であることを表す

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有人不肯任情徴
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(ひと)()って(うけが)わずんば (じょう)(まか)せて(ちょう)せよ

承知しない人があれば
情に任せて 
明徴せよ
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直截根源佛所印
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(じき)(こん)(げん)()るは (ほとけ)(いん)する(ところ)

直接、分別や執着の根源を断ち切る事は
仏が(しる)し残した所である

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摘葉尋枝我不能
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()()み (えだ)(たず)ぬるは我れ(あた)はず

葉を摘んだり 枝を求めたりする
些末なことを 私は行わない

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摩尼珠人不識
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摩尼珠 (ひと)()らず

不可思議な徳をそなえた宝の(たま)
人は()らない

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如來藏裏親收得
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如來藏()(した)しく(しゅう)(とく)

仏となる可能性は
(全ての事柄の)裏側に
親しく収まっている

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六般神用空不空
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(ろっ)(ぱん)(しん)(ゆう) (くう)にして(くう)ならず
六根六境を認識する不思議な働きは
であり でない

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一顆圓光色非色
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(いっ)()(えん)(こう) (しき)にして(しき)(あら)

小さな一粒の丸い光は
物質であり 物質でない

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淨五眼得五力
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()(げん)(きよ)うし ()(りき)()たり

修行の段階に応じて(そな)わる能力
五眼)を清め
悪い法を破る力(
五力)を得る

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唯證乃知難可測
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(た)だ (しょう)して(すなわ)(し)(はか)るべきこと(かた)

ただ(それらは)
証悟してから知るもので
(悟らなければ)推し測るのは難しい

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鏡裏看形見不難
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(きょう)()(かたち)()る ()ること(かた)からず

鏡の中に映っているものを看るとき
見ることは難しくないが

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水中捉月爭拈得
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(すい)(ちゅう)(つき)(とら)うこと (いか)でか(ねん)(とく)せん

水の中に映っている月を(とら)えるときは
どうやって(つま)()るというのか

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常獨行常獨歩
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(つね)(ひと)()き (つね)(ひと)(あゆ)

常に独りで行き 常に独りで歩む

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達者同遊涅槃路
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(たっ)(しゃ)(おな)じく(ね)(はん)(みち)(あそ)
悟りの境地に達した者は
みな同じ様に
涅槃の路に遊んでいて

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調古神清風自高
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調(しら)()り (しん)(きよ)うして  (かぜ)(おのず)から(たか)

格調は古風だが 精神は清らかで
風格には自然な高貴さがある

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貌顇骨剛人不顧
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(かたち)(かたじ)け (ほね)(かと)うして (ひと)(かえり)みず

容貌は頬がこけていて 骨格は(かた)
人から(かえり)みられることがない

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窮釋子口稱貧
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(ぐう)(しゃく)() (くち)(ひん)(しょう)すれど

金銭的にしている釈迦の弟子は
口では貧しいと(とな)えるが

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實是身貧道不貧
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(じつ)に是れ ()(ひん)にして(みち)(ひん)ならず

実にこれ 身なりが貧しくても
歩んでいる道は貧しくない

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貧則身常披縷褐
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(ひん)なれば(すなわ)()(つね)()(かつ)()
貧しければ
粗末な衣がその身に常に(なび)くだけで

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道則心藏無價珍
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(みち)あれば(すなわ)(こころ)(む)(げ)(ちん)(ぞう)
道があるから
その心には

価値が測れない珍しい宝が(おさ)まっている

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無價珍用無盡
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()()(ちん)は (もち)うれど()きること()

価値が測れないほど珍しい宝は
いくら使っても尽きることが無く

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利物應機終不悋
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(もの)(り)して(き)(おう)じて(つい)(お)しまず
衆生()に利益を与え 機会に応じ
そして 最後まで出し惜しみしない

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三身四智體中圓
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(さん)(しん)()() (たい)(ちゅう)(まどか)なり

仏の三身四つの智慧
その体の中に円満に備わっている

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八解六通心地印
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(はち)()(ろく)(つう) (しん)()(いん)
八種の解脱六つの神通力
心の本性の中に(しる)されている

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上士一決一切了
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(じょう)()一決(いっけつ)して一切(いっさい)(りょう)
徳が備わった優れた人は
一度の決心で一切を悟る

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中下多聞多不信
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(ちゅう)()(おお)()いて(おお)(しん)ぜず
平凡な人や愚かな人は
多くを聞いて多くを信じない

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但自懷中解垢衣
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()(みずか)(かい)(ちゅう)(こう)()()

ただただ 自らの(ふところ)の中の
(宝珠が縫い込まている)
垢がついた衣を解きなさい
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※法華経
衣裏繋珠の譬え
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誰能向外誇精進
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(だれ)()(そと)()かって精進(しょうじん)(ほこ)らん

外に向かって精進を誇るなんて
誰が出来るか

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從他謗任他非
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()(ぼう)するに(したが)い ()()するに(まか)
他人が誹謗するなら
他人が誹謗するままに任せておく
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把火燒天徒自疲
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(ひ)(と)って(てん)(や)けば(いたずら)(みずか)(つか)れる

火をとって天を焼こうとするように
無駄にその人自身が疲れるだけだ

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我聞恰似飮甘露
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(われ)()くも(あたか)(かん)()()むに()たり

私が誹謗を聞くのは
ちょうど
甘露を飲むことに似ており

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銷融頓入不思議
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(しょう)(ゆう)して(とん)()()()()
(誹謗は)()()
ただちに
不可思議の境地に入る

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觀惡言是功徳
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(あく)(げん)()()(どく)なりと(かん)ずれば
悪言を功徳と観るとき

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此即成吾善知識
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()(すなわ)()(ぜん)()(しき)となる
悪言が私を導く師となる
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不因訕謗起寃親
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(せん)(ぼう)(よ)って(おん)(しん)(お)こさざれば
誹謗されても それに因って 
怨み・親しみを起こさなければ
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※大般涅槃経

冤親債主

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何表無生慈忍
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(なん)(む)(しょう)(じ)(にん)(ちから)(ひょう)せん
どうして(わざわざ)
無生慈忍の力を表現しようか

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70
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宗亦通説亦通
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(しゅう)()(つう)じ (せつ)()(つう)

宗旨にも通じ 説法にも通じている

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定慧圓明不滯空
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(じょう)()(えん)(みょう)にして(くう)(とどこお)らず
禅定智慧円明
空の境地にも滞らない

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非但我今獨達了
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()()(いま)(ひと)(たつ)(りょう)するのみに(あら)
ただ私だけ 今 独りで
この境地に達したわけではない

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恒沙諸佛體皆同
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(ごう)(しゃ)(しょ)(ぶつ) (たい)(みな) (おな)
ガンジス川の砂の数ほど多くの諸仏も
得体は皆 同じである

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師子吼無畏説
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()()() ()()(せつ)
獅子が()えるような熱弁で説かれる
(おそ)れなき説法は

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百獸聞之皆腦裂
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(ひゃく)(じゅう)(これ)()いて (みな)(のう)(れつ)
(説法を)聞いた多くの獣の
全ての脳を破裂させ

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香象奔波失却威
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(こう)(ぞう)(はん)(ぱ)するも(い)(しっ)(きゃく)
発情期に入り)
香気を発しながら暴れまわる象の
その猛威を失わせる

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天龍寂聽生欣悦
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(てん)(りゅう)(しず)かに()いて(きん)(えつ)(しょう)じる
ただし
(しず)かに聞いていた
天界の衆生竜神
欣喜し法悦を生じる

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遊江海渉山川
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(こう)(かい)(あそ)び (さん)(せん)(わた)
大河や海を気の向くままに遊歩し
山や川を(わた)った

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80
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尋師訪道爲參禪
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()(たず)ね (みち)()うて (さん)(ぜん)()
師を尋ね 道を訪ね 参禅した
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自從認得曹谿路
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(そう)(けい)(みち)を (にん)(とく)して自従()
曹渓大師(六祖慧能)の
禅の路を知ってからは

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了知生死不相關
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(しょう)() (あい)(かか)わらざることを(りょう)()
生死が 深く関与しあっていないと
はっきり理解した

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行亦禪坐亦禪
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(ぎょう)()(ぜん) ()()(ぜん)

歩くのも禅 坐るのも禅

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語默動靜體安然
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()(もく)(どう)(じょう) (たい)(あん)(ねん)

語るときも黙るときも
動くときも静寂のときも
その姿は安らかである

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縱遇鋒刀常坦坦
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(たと)(ほう)(とう)()うも (つね)(たん)(たん)

 たとえ刀の切っ先を突きつけられても
通常通りで変わりない

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假饒毒藥也間間
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仮饒(たとい) (どく)(やく)()(かん)(かん)

たとえ毒薬を盛られても
また同様に のんびりしている

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我師得見然燈佛
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(わが)() (ねん)(とう)(ぶつ)(まみ)ゆることを()

私の師(お釈迦様)が 然燈仏に出会えて

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多劫曾爲忍辱仙
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()(ごう)(かつ)て (にん)(にく)(せん)()

過去に長い期間
あらゆる困苦を耐え忍ぶ

“忍辱仙人”と為り 修行され

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90
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幾迴生幾迴死
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(いく)(かい)(しょう)じ (いく)(かい)()

幾回か 生まれ変わり
幾回か 死に変わられた
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生死悠悠無定止
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(しょう)(じ) (ゆう)(ゆう)とし(じょう)(し)(な)
どの生死でも悠々とされ
正定を止めることが無かった
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六度集経・ジャータカなど
(忍辱仙人説話)
暴虐な歌利王は 難癖をつけ
忍辱仙人の四肢や耳・鼻を削がせた
しかし
忍辱仙人は動じなかった
怒らないばかりか

慈悲の心を失わなかった為
目の当たりにした歌利王は 改心した
 

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自從頓悟了無生
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(とん)に ()(しょう)()(りょう)して自従()

ふと無生を悟り切った時から
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於諸榮辱何憂喜
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(もろもろ)(えい)(じょく)()いて (なん)(ゆう)()せん

諸々の名誉や恥辱に
憂えたり 喜んだりしなくなり

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入深山住蘭若
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(しん)(ざん)(はい)り (らん)(にゃ)(じゅう)

深い山に入り
寺(
蘭若)に住むようになった
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岑崟幽邃長松下
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(しん)(ぎん) (ゆう)(すい)たり (ちょう)(しょう)(もと)

奥深く静かな場所の
厳しい山の中にある高くそびえた松の下

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優游靜坐野僧家
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(ゆう)(ゆう)(じょう)()す ()(そう)(いえ)

ゆったりとした心のまま(優游
静かに坐っている
田舎の僧の家で

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閴寂安居實蕭灑
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(げき)(じゃく)たる(あん)()は (じつ)(しょう)(しゃ)たり

ひっそりとして寂しい(闃寂)修行は
実に淡白であっさり(
蕭灑)したものだが
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覺即了不施功
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(かく)すれば(すなわ)(りょう)す (こう)()かざることを

(さと)れば了解するだろう
ここでは(作為的な)働きが

行われていないことを

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100
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一切有爲法不同
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(いっ)(さい)()()(ほう)は (おな)じからず

因縁によって形作される存在は全て
(絶えず変化するものであり、ずっと)
同じものではない

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住相布施生天福
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(じゅう)(そう)()()は (しょう)(てん)(ふく)

(ある局面に)
(とど)まったままで行われる布施は
天界に生まれる為の供物(福)で

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猶如仰箭射虚空
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(なお) (あお)いで ()()(くう)()るが(ごと)

 ちょうど天を仰いで
虚空に矢を射るようなものである

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勢力盡箭還墜
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(せい)(りょく)()きれば ()(かえ)って()

勢力が尽きれば
矢はひき(かえ)して堕ちるように

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招得來生不如意
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(らい)(しょう)()(にょ)()を (しょう)(とく)せん

来世で思い通りに行かない事態を
招くだろう 

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爭似無爲實相門
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(いか)でか()かん ()()(じっ)(そう)(もん)

どうして無為実相の門を通らないのか

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一超直入如來地
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(いっ)(ちょう) (じき)(にゅう) (にょ)(らい)()なるに

迷いや不安を一気に超え
如来の境地に直接入るのに
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但得本莫愁末
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()(もと)()て (すえ)(うれ)うること(なか)

ただ根本を得よ 末端を(うれ)えるな

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如淨琉璃含寶月
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浄瑠璃(じょうるり)(たから) (つき)(ふく)むが(ごと)

(根本を得るのは)
浄らかな
瑠璃の宝珠に月が映りこむとき
宝珠が月を含むようなものである
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110
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既能解此如意珠
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(われ)(いま)()(にょ)()(しゅ)()して

私は今 この如意宝珠のことが(わか)った
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自利利他終不竭
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()()()() (つい)()きず

(宝珠の功徳は無限で)
自利でも利他でも
(功徳は)どこまでも尽きない
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江月照松風吹
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(こう)(げつ)()らし (しょう)(ふく)()

江上に月が照り 松の間を風が吹く
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永夜清宵何所爲
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(えい)() (せい)(しょう) (なん)(しょ)()

この永い夜の 清らかなるの景色は
いったい何が為す所だろう

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佛性戒珠心地印
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(ぶっ)(しょう)(かい)(しゅ)(しん)()(いん)

清らかな景色の元で
時間と空間を超越し
天地と私を一つに感じる時

仏性戒珠が 心に印され
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霧露雲霞體上衣
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()()(うん)()(かい)(じょう)(ころも)

(きり)(つゆ)(くも)(かすみ)が 体上を被う衣となる
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降龍鉢解虎錫
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(こう)(りゅう)(はち) (かい)()(しゃく)

降龍の鉢を持ち 解虎の錫をつく
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※據續高僧傳卷十六僧稠傳載
僧稠嘗詣懷州西王屋山修習禪定
聞兩交鬥 咆響震巖
乃以錫杖中解 各散而去。

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兩鈷金環鳴歴歴
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両鈷(りょうこ)金環(きんかん) ()って歷歷(れきれき)

錫杖頭部で遊ぶ二つの(両鈷)
金の環は 
歴々と鳴る

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不是標形虚事持
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()(かたち)(ひょう)して(きょ)()()するにあらず

この形を標榜しているのは
虚事の維持ではない
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120
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如來寶杖親蹤跡
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如来(にょらい)(ほう)(じょう) (した)しく(しょう)(せき)

如来の宝杖をついて 身をもって
如来の跡を追うためである

.
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不求眞不斷妄
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(しん)(もと)めず (もう)(だん)ぜず

真実を求めることもないし
虚妄を断つこともない

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了知二法空無相
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二法(にほう)(くう)にして 無相(むそう)なることを了知(りょうち)すれば

(真と妄の)二つの法は
にして 無相だと了知すれば
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無相無空無不空
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無相(むそう)(くう)()く 不空(ふくう)()

無相は で無くなる
空でないものでも無くなる

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即是如來眞實相
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(すなわ)()れ 如来(にょらい)(しん)(じつ)(そう)

すなわち これが
如来の真実の相である
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心鏡明鑒無礙
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(しん)(きょう)(あき)らかに(かんが)む (さまたげ)なし

心の鏡は 明確に映しだす
(その働きを)(さまたげ)るものはない

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廓然瑩徹周沙界
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(かく)(ねん)瑩徹(えいてつ)して 沙界(しゃかい)(あまね)

(その働きは)わだかまりなく透き通り
宇宙に散らばる無数の世界の

すみずみまで行き渡る

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萬象森羅影現中
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万象(ばんしょう)森羅(しんら) 中に(よう)(げん)する

全ての現象 全ての存在の中に影現する
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一顆圓光非内外
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一顆(いっか)円光(えんこう) 内外(ないがい)(あら)

小さな一粒の丸い光に 内も外も無い
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130
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豁達空撥因果
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豁達(かったつ)(くう)は 因果(いんが)()ねる

虚無主義の空観(豁達)は
因果の道理をはねる
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因果撥無
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莽莽蕩蕩招殃禍
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莽莽(もうもう) 蕩蕩(とうとう)として (おう)()(まね)

茂るままに 生えみだれれば
災難を招くだけである

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棄有著空病亦然
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(ゆう)()て (くう)()(やまい)も ()(しか)

有を棄てて に執着してしまう病も
また同然で

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還如避溺而投火
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(かえ)って(でき)()け ()(とう)ずるが(ごと)

それはかえって
溺れるのを避けようとして
火の中に投身するようなものだ

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捨妄心取眞理
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(もう)(しん)()て 真理(しんり)()

妄心を捨て 真理を取る
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取捨之心成巧僞
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取捨(しゅしゃ)(こころ) (こう)()()

取捨する心が 巧みな偽りと成る

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學人不了用修行
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(がく)(にん) (りょう)せずして 修行(しゅぎょう)(もち)

参学する者が
(この機微を)了解しないまま
修行に心を働かせるのは
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深成認賊將爲子
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(ふか)(ぞく)(みと)め (まさ)()()ることを()

盗賊を深く認め
あたかも子供とするようなものだ
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損法財滅功徳
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(ほう)(ざい)(そん)し 功徳(くどく)(めっ)するは

法財を損ね 功徳を滅らすのは
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140
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莫不由斯心意識
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()(しん)意識(いしき)に ()らずということ()

この心citta意manas識vijñāna
執着している事が原因である
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是以禪門了却心
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(ここ)(もっ)禅門(ぜんもん)(こころ)了却(りょうきゃく)

ここを以て 禅宗の法門は
心の問題に決着をつける

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頓入無生知見力
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(とん)無生(むしょう)(はい)るは 知見(ちけん)(ちから)なり

にわかに無生の境地に入るのは
如実知見の力による
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大丈夫秉慧劍
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大丈夫(だいじょうぶ) ()(けん)()

立派に精進する者は
智慧の剣を手にとれる

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般若鋒兮金剛焔
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般若(はんにゃ)(ほこ) 金剛(こんごう)(ほのお)

般若の鉾と 金剛の焔は

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非但空摧外道心
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()()(どう)(こころ)()け (さい)するに(あら)

ただ外道の心を空け(妄心を)
破摧してきただけでなく

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早曾落却天魔膽
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(はや)(かつ)て 天魔(てんま)(たん)落却(らっきゃく)

ずっと昔から
(修行を妨げる)
悪魔の気力・胆力を落とし退けてきた

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震法雷撃法鼓
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(ほう)(らい)(ふる)い (ほっ)()()

法雷を震わせ 法鼓を撃つ

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布慈雲兮灑甘露
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()(うん)()き 甘露(かんろ)(そそ)

慈悲の雲を布き 甘露をそそぐ

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150
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龍象蹴踏潤無邊
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(りゅう)(ぞう)(しゅう)(とう)無辺(むへん)(うるお)

高徳のすぐれた人物(龍象)の歩みは
恵みや利益を 果てなく与え

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三乘五性皆醒悟
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三乗(さんじょう) 五性(ごしょう) (みな) (せい)()

 声聞乗縁覚乗菩薩乗三乗
仏性が在る者も無い者も(
五性各別
皆、迷いから醒め 悟りを得る 

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雪山肥膩更無雜
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雪山(せつざん)()() (さら)(まじわり)なし

ヒマラヤの香草が生える肥えた場所には
少しも雑草が無く

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純出醍醐我常納
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(もっぱ)(だい)()を出し ()(つね)(おさ)

純粋な醍醐がつくり出されているが
私は常にそのような仏法を納めている

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一性圓通一切性
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一性(いちしょう) (えん)(づう)す 一切(いっさい)(しょう)

一つの本性
一切の本性に あまねく通じ

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一法遍含一切法
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一法(いっぽう) (あまね)(ふく)む 一切(いっさい)(ほう)

一つの
一切の法を あまねく含んでいる

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一月普現一切水
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一月(いちげつ) (あまね)(げん)ず 一切(いっさい)(みず)

一つの月が
全ての水面に あまねく現れ

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一切水月一月攝
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一切(いっさい)水月(すいげつ)は 一月(いちげつ)(せっ)
(水面に映る)全ての月は
一つの月に
包摂される

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諸佛法身入我性
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諸仏(しょぶつ)(ほっ)(しん) ()(しょう)()

諸仏の真理そのものの本体が
私の本性に入り

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160
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我性同共如來合
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()(しょう)は 如来(にょらい)(ごう)し 同共す

私の本性は
如来と合し 共に同じくする
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一地具足一切地
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一地(いっち)()(そく)す 一切(いっさい)()

一つの境地の中に
一切の境地が備わっている

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非色非心非行業
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(しき)(あら)ず (しん)(あら)ず 行業(ぎょうごう)(あら)

(それは)物質的存在でもなく
心でもなく 行為でもない

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彈指圓成八萬門
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弾指(だんし)(えん)(じょう)す 八万(はちまん)(もん)

指を弾く一瞬の間に
八万四千の仏教の全ての教法が

円満に成就し
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刹那滅 却三祇劫
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刹那(せつな)滅却(めっきゃく)す (さん)()(ごう)

刹那の一瞬の間に
菩薩が成仏する長い時間(三祇百大劫)が滅する

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一切數句非數句
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一切(いっさい)数句(すうく)は 数句(すうく)(あら)

(世間で知られている)
一切の仏法の言葉は
(この機微を表した)

言葉ではない

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與吾靈覺何交渉
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()(れい)(かく)と (なん)交涉(こうしょう)せん

私の霊覚
どうして関わりを持つというのか

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不可毀不可讃
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(そし)()からず ()()からず

謗るべきでないし 褒めるべきでもない
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體若虚空勿涯岸
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(たい)()(くう)(ごと)くにして (がい)(がん)()

(仏性の)実体は
虚空のようなもので
(はて)(きし)がない
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170
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不離當處常湛然
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当処(とうしょ)(はな)れずして (つね)(たん)(ぜん)

今ここを離れず 常に湛然としている

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覓即知君不可見
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(もと)むれば(すなわ)()る (きみ)()()からざるを

(もと)めたとき知るだろう
君が(仏性を)見ようとしても

見れないことを

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取不得捨不得
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()ることを()ず ()てることを()

(仏性を)取ることも出来ないし
捨てることも出来ない

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不可得中只麼得
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不可(ふか)(とく)(なか) ()()()たり

(仏性は)求めても得られない中で
ただ得るものであり

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默時説説時默
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(もく)(とき)()き ()(とき)(もく)

黙っている時に説かれるもので
説く時には何も説かれていないものだ

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大施門開無壅塞
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(だい)施門(せもん)()き (よう)(そく)()

巨大な法施の門は開いている
さえぎるものは無い

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有人問我解何宗
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(ひと)()って (われ)(なん)(しゅう)()すると()わば

もし人が居て
私に何の宗教道理を了解しているのかと問えば

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報道摩訶般若力
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(むく)いて()わん 摩訶(まか)般若(はんにゃ)(ちから)

(仏恩に)報いて(い)おう
摩訶
般若の力だと
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或是或非人不識
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(ある)いは() (ある)いは() (ひと)()らず

あるときはとし あるときはとする
だから 人は認識できない

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180
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逆行順行天莫測
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逆行(ぎゃっこう) 順行(じゅんこう) (てん)(はか)ること()

逆行したり 順行したりするから
天の神々でも測れない  

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吾早曾經多劫修
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()(はや)(かつ)て ()(こう)()(しゅう)

私は 早くから長い期間 修行してきた
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不是等間相誑惑
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()(なお)(ざり)(あい)(おう)(わく)するにあらず

これは なおざりに
たぶらかし惑わし合うものではない
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建法幢立宗旨
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(ほっ)(そう)()て (しゅう)()(りっ)

仏法の旗を建て 宗旨を立てるという
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明明佛勅曹溪是
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明明(めいめい)たる(ぶっ)(ちょく) (そう)(けい) ()れなり

明らかな仏陀の言葉が
六祖慧能の居る曹渓で行われている

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第一迦葉首傳燈
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第一(だいいち)()(しょう) (はじ)めて(でん)(とう)

第一に迦葉尊者へ 正法眼蔵が伝えられ
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二十八代西天記
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二十八代(にじゅうはちだい) 西天(さいてん)()

その後、二十八代が
西にある
天竺で伝わったと
書き記されている
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法東流入此土
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(ほう)(ひがし)(なが)れ 此土(しど)(はい)

仏法は東へ流れ
この国の土地に入り

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菩提達磨爲初祖
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菩提(ぼだい)達磨(だるま)を 初祖(しょそ)()

菩提達摩
(中国禅の)
初祖となった

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190
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六代傳衣天下聞
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六代(ろくだい)伝衣(でんえ) 天下(てんか)()こゆ

菩提達磨から六代伝わってきた
伝衣の故事は 天下に聞こえている
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後人得道何窮數
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後人(こうじん)(みち)()る (なん)(かず)(きわ)めん

この後 道を得る人の数を
どうして調べ尽くせようか

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眞不立 妄本空
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(しん)をも(りっ)せず (もう)(もと)より (くう)なり

真理をも立てない
虚妄はモトより(言うまでもない)
一切はである

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有無倶遣不空空
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有無(うむ) (とも)()れば ()(くう)(くう)なり

有ると無しとを 倶に(つか)わせれるなら
空でないものも である

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二十空門元不著
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二十(にじゅう)空門(くうもん) (もと)より(ぢゃく)せず

般若経には二十ものが記されているが
(そんな言葉には)もとより執着しない
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一性如來體自同
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一性(いっしょう) (にょ)(らい)(たい)(おの)ずから(おな)

(仏性というのは)一つの本性であるから
如来の有様は

自ずと同じようなものである
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心是根法是塵
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(しん)()(こん) (ほう)()(じん)

心は
(迷いを起こす原因となる)六根であり
法は

(煩悩を起こす原因となる)六塵である

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兩種猶如鏡上痕
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両種(りょうしゅ)()お 鏡上(きょうじょう)(あと)(ごと)

(ふた)つの(たね)は さながら
鏡の上の痕垢のようなもので

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痕垢盡除光始現
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(こん)() 除去(じょきょ)()き (ひかり)(はじ)めて(あらわ)

痕垢が除去し尽きるとき
光が始めて現れ

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200
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心法雙忘性即眞
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(こころ)(ほう) (なら)んで(わす)れれば (しょう)(すなわ)(しん)なり

心と法を (ふた)つそえて忘れるとき
本性は真実となる

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嗟末法惡時世
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(あぁ) 末法(まっぽう)(あく)時世(じせい)

あぁ 末法の悪しき世の中

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衆生福薄難調制
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衆生(しゅじょう) (ふく)(うす)くして 調制(ちょうせい)(がた)

衆生は薄幸
調えたり制限したりすることが難しい

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去聖遠兮邪見深
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(せい)()ること(とお)くして 邪見(じゃけん)(ふか)

賢聖の時代は遠く過ぎ去り
道理を無視する誤った考えが深い

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魔強法弱多恐害
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()(つよ)(ほう)(よわ)くして (きょう)(がい)(おお)

魔羅の力は強く 法の力は弱く
恐れや害悪が多い

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聞説如來頓教門
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如来(にょらい)(とん)(きょう)(もん)を ()くを()くも

(人々が)如来の頓教法門
説かれているのを聞いても

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恨不滅除令瓦碎
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瓦解(がかい)せしめ 滅除(めつじょ)せざるを恨む

(人々の魔や怨害を瓦解させ
滅除しきれないことを恨む
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作在心殃在身
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()(こころ)()り (おう)()()

作為(の原因)は心にあるが
わざわい(の原因)は
身業にある
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不須寃訴更尤人
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寃訴(えんそ)し (さら)(ひと)(とが)むることを(もち)いざれ

うらみを訴えたり
また更に

人をとがめたりする必要はない 
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210
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欲得不招無間業
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無間(むげん)(ごう)(まね)かざることを ()んと(ほっ)せば

無間地獄に落ちる五つの悪業
五無間業)を招きたくなければ

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莫謗如來正法輪
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如来(にょらい)正法(しょうほう)(りん)を (そし)ること(なか)

如来の説く教え(正法輪)を
謗ってはいけない

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旃檀林無雜樹
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(せん)(だん)(りん)に (ぞう)(じゅ)()

香木に使われる樹木 栴檀の林には
雑木が生えない 
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欝密森沈師子住
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(うつ)(みつ) (しん)(ちん)として 獅子(しし)のみ()

密に(しげ)る森は落ち着いていて
(獅子吼する)求道者だけが住んでいる
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境靜林間獨自遊
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(さかい) (しず)かに (はやし)(しず)かに (ひと)(おの)ずから(あそ)

境域静寂で 林は間靚としている
(求道者は)独り自然に遊び
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走獸飛禽皆遠去
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(そう)(じゅう) ()(きん) (みな) (とお)()

走りまわる獣や飛びまわる鳥など
(邪魔するもの)は皆 遠くへ去る

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師子兒衆隨後
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獅子(しし)() (ことごと)(あと)(したが)

獅子の児は
ことごとく(獅子の)後に随い
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三歳便能大哮吼
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三歲(さんさい)にして 便(すなわ)()(おお)いに(ほう)()

三歳になると
大きな咆哮が出来るようになる

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若是野干逐法王
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(も)(こ)(や)(かん) 法王(ほうおう)(お)わば
もし野干が 法王を逐いかけても

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220
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百年妖怪 虚開口
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百年 妖怪(ようかい)も (むな)しく(くち)(ひら)かん

百年 妖怪が
ただ虚しく口を開くだけである

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圓頓教勿人情
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(えん)(とん)(きょう)は 人情(にんじょう)()

円頓の教えには 私情が無いから
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有疑不決直須爭
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(うたが)いを(ゆう)(けっ)せずんば (じき)(すべか)らく(あらそ)うべし

もし疑いを有し 決着をつけたければ
すぐにでも争議すべきだ

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不是山僧逞人我
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()(さん)(そう)が 人我(にんが)(たくま)しゅうするにあらず

これは山寺の僧侶が
我執を逞しくしている訳でない

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修行恐落斷常坑
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修行(しゅぎょう)(おそ)るは (だん)(じょう)(あな)()ちんことを

修行で恐れるのは(誤った考えである)
断見常見(あな)に落ちてしまうことだ
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非不非是不是
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()()ならず ()()ならず

(その時々の 心の在り方次第で)
も非でないし も是でない

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差之毫釐失千里
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(これ)(たが)うこと(ごう)()もすれば 千里(せんり)(しっ)

(この機微に)
ごくわずかでも差異を生じるなら
千里を失う

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是則龍女頓成佛
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()なるときは(すなわ)龍女(りゅうじょ)も (とん)成仏(じょうぶつ)

道理にかなっていれば
竜王の8歳の娘のように
直ちに
成仏するし

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230
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非則善星生陷墜
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()なるときは(すなわ)ち (ぜん)(しょう)()きながら(かん)(つい)

道理にかなっていなければ
善星比丘のように
生きながら無間地獄に落ちる

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吾早年來積學問
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()(そう)(ねん)より(このか)た 学問(がくもん)()

私は若い時から
学問をきわめようと研鑽を積んできた

.
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亦曾討疏尋經論
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()(かつ)て ()(たず)ね (きょう)(ろん)(たず)

また 以前は
経典の注釈書を調べたり
経論を捜し求めたりして

.
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分別名相不知休
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名相(めいそう)分別(ふんべつ)して ()むことを()らず

(数ある仏教聖典の)名や色形を分別
休むことを知らなかった

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入海算沙徒自困
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(うみ)(はい)って(すな)(かぞ)え (いたず)らに(みずか)(こん)

(しかし それらは)
海の中に入ってえるようなもので

ただひたすら自分で自身を困窮させ

.
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却被如來苦訶責
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(かえ)って (にょ)(らい)(ねんごろ)()(しゃく)される

期待と反対に
如来から手厚く
訶責されるだけだった

.
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數他珍寶有何益
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()(ちん)(ぽう)(かぞ)えて (なん)(えき)()らん

他人の珍しい宝を数えて
何の
利益があるのか と

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從來蹭蹬覺虚行
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(じゅう)(らい) (そう)(とう)として (うつ)ろに(ぎょう)ずることを(おぼ)

これまでは 不遇で志を得ないまま
中身のない修行をしていたように感じる

.
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多年枉作風塵客
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()(ねん) ()げて (ふう)(じん)(きゃく)()

長い間 道理に反し
こまごまとした雑事の客となっていた

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240
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種性邪錯知解
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(しゅ)(しょう) (よこしま)なれば (あやま)って()()

人の素質は怪しいものである

だから錯覚し
知識の力で悟ろうとしてしまい

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不達如來圓頓制
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(にょ)(らい) (えん)(とん)(せい)に (たっ)せず

如来の円満頓足な境地まで
達することがない

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二乘精進勿道心
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()(じょう)は 精進(しょうじん)にして 道心(どうしん)()

声聞縁覚の二乗は
ひたすら仏道修行にはげむが
他を悟らせようとする心がなく

.
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外道聰明無智慧
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外道(げどう)は 聡明(そうめい)にして 智慧(ちえ)なし

仏教以外の教えを信奉する人は
聡明で賢いが
真理を把握する智慧(
般若)がない

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亦愚癡亦小騃
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()たは愚痴(ぐち) ()たは小騃(しょうがい)

また愚痴で愚かで
また凡小で愚かである
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空拳指上生實解
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空拳(くうけん) 指上(しじょう)に (じつ)()(しょう)

空虚な拳なのに その指上に
真実の理解を生じたとか
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大智度論 巻第二十
我坐道場時 智慧不可得 空拳誑
 小児 以度於一切

.
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執指爲月枉施功
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(ゆび)()って(つき)()し ()げて(こう)(ほどこ)

(月を指し示している)
指を月とみなしたり
意図に反する効用を施与し

.
.
.
.

根境法中虚
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根境(こんきょう) 法中(ほうちゅう)(むな)しく(ねっ)(かい)

六根六境(や六識)など
世界を構成する一切の法(
三科)の中に
中身のない奇怪なものを捏造する

.
.
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不見一法即如來
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一法(いっぽう)()ざれば (すなわ)如来(にょらい)

永久不変に存在するものを見なければ
それは、まさしく如来であり

.
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250
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方得名爲觀自在
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(まさ)()づけて 観自在(かんじざい)()すことを()たり

まさに観自在と名付けることが出来る

.
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了即業障本來空
.

(りょう)すれば(すなわ)ち 業障(ごっしょう) 本来(ほんらい) (くう)なり

(この道理を)了得すれば
悪業に因る障害は
本来の仮りの存在となるが

.
.
.
.

未了應須還夙債
.

(いま)(りょう)せざれば (かえ)って(すべから)宿債(しゅくさい)(つぐな)うべし

未だに了得しないというのなら
迷いの世界に還って
宿債でも償うといい

.
.
.
.

饑逢王膳不能飡
.

()えて(おう)(ぜん)()えども ()らうこと(あた)わず

飢えるときに
王様の(仏法の例え)に
逢えたとしても

(了得しない者は)
食べることが出来ないだろう
.
.
.
.

病遇醫王爭得瘥
.
()んで()(おう)()うとも (いか)でか()ゆることを()

病んでいるときに
医者の王様(仏法の例え)に
遇えたとしても

(了得しない者の病が)
どのようにして治るというのか

.
.
.
.

在欲行禪知見力
.

(よく)()って(ぜん)(ぎょう)ずるは 知見(ちけん)(ちから)なり

欲だらけの世界に在りながら
禅を行うのは
知見の力である

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火中生蓮終不壞
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火中(かちゅう)(しょう)じる(はす)は (つい)()せず

(欲望が燃えさかる)
火の中で生じる蓮の花は
ずっと最後まで壊れないだろう 

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勇施犯重悟無生
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勇施(ゆうせ) (じゅう)(おか)して無生(むしょう)(さと)

勇施比丘は
重ねて罪を犯したが
無生の理を悟り

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仏説浄業障経(勇施比丘の話)
過去久遠の昔

衆香世界の無垢光如来の時に
勇施という比丘がいた

その容姿があまりに美しかったため

長者の娘(既婚)が恋慕し病になった

娘の母親は 哀れに思い

勇施比丘を誘惑し密かに通じさせた

娘の夫はコレを知り

勇施比丘を殺そうとした

しかし

勇施比丘は長者の娘と謀って
逆に夫を毒殺した

罪を重ねた勇施比丘は悩み苦しんだ
そこへビジュタラ菩薩が現れ

こう告げた
比丘よ 恐れることなかれ

われ今 力能く汝に無畏を施さん
諸法は鏡像に同じ、亦た水中の月の如し
凡夫愚惑の心、痴恚(ちい)愛を分別す

この偈を聞いた勇施比丘は
深く反省するとともに
無生法忍を悟り たちまち成仏した
その後

宝月如来という仏になられ
今現は

西方の常光国に住まわれているという
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早時成佛于今在
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(そう)()成仏(じょうぶつ)して (いま)()

すぐに成仏され
(宝月如来という仏様になられ)
今は常光国に在るという

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260
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師子吼無畏説
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()()() 無畏(むい)(せつ)

仏は 獅子が咆哮するように勇ましく
畏れを無くす法を説かれたのに

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深嗟𢢺頑皮靼
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(ふか)(なげ)く 懵懂(もうどう)たる(がん)()(たん)

ぼんやりとしか理解せず

言う事を聞かない仕方ない人が
居ることを 深く嘆く

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秖知犯重障菩提
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()(ぼん)(じゅう)の 菩提(ぼだい)()うることを()るも

罪を重ねて犯すと
悟りの支障になるという

因果説を知っていても
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不見如來開祕訣
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如来(にょらい)秘訣(ひけつ)を (ひら)くを()

如来の深遠微妙なる仏法
(大乗仏教の教え)が
開かれているのを見ることがない

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有二比丘犯婬殺
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()比丘(びく)()り 淫殺(いんさつ)(おか)して

昔 二人の比丘が居て
淫戒戒・殺人戒を犯した
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波離螢光増罪結
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波離(はり)蛍光(けいこう) 罪結(ざいけつ)()

優婆離尊者は
二人の比丘から相談をうけ
法を説いて聞かせたが
蛍の光のような弱々しいものだった為
罪との結びつきを増やしてしまった
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維摩大士頓除疑
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維摩(ゆいま)大士(だいし) (とん)(うたが)いを(のぞ)

維摩居士が説き聞かせると
たちまち二人の疑いは取り除かれた
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猶如赫日銷霜雪
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()(かく)(じつ)霜雪(そうせつ)()かすが(ごと)

それはまるで赤々と燃えるような日光が
霜・雪を溶かすようなものだった

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不思議解脱力
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不思議(ふしぎ) 解脱(げだつ)(ちから)

不可思議な 解脱の力の

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維摩経 弟子品
優婆離が見舞いを断る理由
維摩経の別名は『不可思議解脱経』

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270
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妙用恒沙也無極
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妙用(みょうよう) 恒沙(ごうしゃ)にして ()(きわ)まり()

巧妙な作用は
ガンジス川の砂ほど多く
極まりがない

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四事供養敢辭勞
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四事(しじ)供養(くよう) ()えて(ろう)()せんや

どうして
三宝に対して行う四種の供養(
四事)のその労苦を辞退しようか

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萬兩黄金亦銷得
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万両(まんりょう)(おう)(ごん)も ()(しょう)()

(ありがたい仏恩に対して)
万両の黄金も ()すことが出来る
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粉骨 碎身未足酬
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粉骨(ふんこつ) 砕身(さいしん)も (いま)(むく)ゆるに()らず

骨を粉にし 身を砕くほど供養しても
まだまだ酬い足りない

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一句了然超百億
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一句(いっく) (りょう)(ぜん)として 百億(ひゃくおく)()える

その一句は 了然
百億の煩悩妄想を超える
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法中王最高勝
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法中(ほうちゅう)(おう) (もっと)高勝(こうしょう)たり

法門の中の王
(である不可思議脱の教え)は
この上なく勝れている
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恒沙如來同共證
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恒沙(ごうしゃ)如来(にょらい) (おな)じく(とも)(しょう)
ガンジス川の砂の数ほど多くの如来達も
同じように 共に証明されてきた

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我今解此如意珠
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()(いま) ()如意(にょい)(じゅ)()

私は今 この如意宝珠を理解した
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信受之者皆相應
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(これ)信受(しんじゅ)する(もの)は (みな) 相応(そうおう)

これを信じて受け入れる者は
皆の心の働きが 互いに結びつくだろう

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280
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了了見無一物
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(りょう)(りょう)として()る ()一物(いちもつ)

悟りえて見る 無の一物

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亦無人亦無佛
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()(ひと)()く ()(ほとけ)()

(執着すべき)人も無く
(執着すべき)仏も無い

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大千沙界海中漚
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(だい)(せん) (しゃ)(かい)は 海中(かいちゅう)(おう)

三千大千世界
ガンジス川の沙の数ほど無数の世界も
海中の水の泡のようなもの

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一切聖賢如電拂
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一切(いっさい)聖賢(せいけん)電払(でんばつ)(ごと)

あらゆる聖人賢者が存在したことも
雷が(はな)たれたようなもの

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假使鐵輪頂上旋
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仮使(たとい) (てつ)(りん) 頂上(ちょうじょう)(めぐ)るも

たとえ
あらゆる物を破戒する熱い鉄の輪を
頭上に旋らされても

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大方便佛報恩經
假使熱鐵輪在我頂上旋
終不以此苦退於無上道

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定慧圓明終不失
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定慧(じょうえ) (えん)(みょう)にして (つい)(しっ)せず

禅定も智慧も 欠けずに満ちていて
ずっと最後まで失われる事はない
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日可冷 月可熱
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()(ひやや)かならしむ()く (つき)(あつ)からしむ()

太陽が冷たくなっても
月が熱くなっても
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※大般涅槃經
不可説言如來法 滅寧説阿伽陀藥
而爲毒藥不可説言 如來法滅寧説
月可令熱日可令冷 不可説言如來法滅

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衆魔不能壞眞説
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衆魔(しゅうま) 真説(しんせつ)()すること(あた)わず

もろもろの悪魔が
真理の教えを破壊することは出来ない

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象駕崢嶸謾進途
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象駕(ぞうが) 崢嶸(そうそう)として(まん)()(すす)

象車の象が
崢嶸と 緩慢に道を進むとき
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290
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誰見螗蜋能拒轍
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(だれ)()る 螳蜋(とうろう)()(てつ)(こば)むことを

一体誰が見るというのか
カマキリが(象車の路線を)拒める状況を
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大象不遊於兎徑
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大象(たいぞう)は 兎径(とけい)(あそ)ばず

大きな象が
兎の道で遊ばないように

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大悟不拘於小節
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大悟(たいご)小節(しょうせつ)(かか)わらず

大悟は 小さな事柄に拘らない

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莫將管見謗蒼蒼
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管見(かんけん)()って (そう)(そう)(そし)ること(なか)

狭い見識で
蒼蒼たる世界を謗ることの無いように

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未了吾今爲君訣
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(いま)(りょう)ぜずんば (われ)(いま) (きみ)(ため)(けっ)せん

まだ了解してないというなら
私が今 君の為に決着をつけてあげよう









明石の禅寺 大蔵院
経典 記事一覧

金剛般若経
般若心経(大本・小本)梵語
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観音経
延命十句観音経
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大悲呪
開甘露門
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消災呪
仏頂尊勝陀羅尼
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中峰和尚座右の銘
興禅大燈国師遺戒
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白隠禅師坐禅和讃.
雲水和讃




般若心経
大悲呪
昔の本堂の様子と 新本堂を再建する様子

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