雲水和讃
.
ここでは 明石の禅寺 大蔵院に伝わる
雲水を詠んだ和讃
「雲水和讃」を記します
.
.
雲水(うんすい)とは
禅の修行者のこと
.
禅の修行者は
教えを求めて
一定の場所に留まること無く
各地を旅をしました
.
宋の蘇軾が作った漢詩に
行雲流水 初無定質
というものがあり
その意味するところが
禅の修行の様子と
通じていることに由来して
禅の修行者を雲水と呼びます
.
禅宗の僧堂に留まり修行している僧や
托鉢行を行っている禅僧も
雲水と呼びます
.
.
.
雲水 うんすい
出典 小学館デジタル大辞泉
1 雲が定めなく行き、
水が流れてやまないように、
一所にとどまらない自由な人。
また、
そのような境涯。
2 行方を定めないで
諸国を行脚する修行の僧。
雲水僧。雲衲うんのう。
行雲流水 こううんりゅうすい
出典 精選版 日本国語大辞典
ただよう雲と流れる水。
他の力にさからわないで、
滞りなく動く自然のゆうゆうとした姿。
自然のまま、
なりゆきにまかせて行動する
さまなどをたとえていう。
蘇軾 「謝民師推官与書」
大略如
行雲流水 初無定質
但常行於所当行
常止於所不可不止
文理自然 姿態横生
大略、行雲流水の如く
初め定質無く
但だ常に当に行くべき所に行き
常に止まらざる可からざる所に止まり
文理自然にして、姿態横生す。
.
.
.
雲水和讃
抑も抑も 茲に諸菩薩の
発心修行の有様を
逐一示し申さんに
筆も言葉も及まじ
先其内のあらましを
諸国修行の姿とて
前に掛けたる袈裟文庫
后に揲る砥(石)に合羽
足には脚絆甲掛で
半ばは穿つ鬼鞋じ
龍の吟ずる谷底も
虎の嘯ぶく山国も
厭ひ恐れは更に無く
昼の飯やみ夕宿は
行く先き先きの寺々を
頼みて無くは是非もなし
宮の拝殿辻堂に
合羽を敷きて一と眠り
木の下一夜の境界は
思い知るべき事もなし
夫より終ひに志ざし
大叢林にかけ登り
掛錫を願ふ有様は
門より威儀を整へて
庭の小縁に腰をかけ
頼み申すの一声が
又二声と呼ぶ声に
応と返事に出で来り
聞く(?)にも優なる断りを
夫れをも厭はず一筋に
縁に打ち伏し頼みつつ
警策柱杖で再びも
追ひ出されては立皈り
漸やく許し上けられて
其より七日の旦過詰
最も殊勝に勤むれば
先づ参堂の一声を
是れで一先づ安堵せり
夫より大衆諸共に
昼参 夜参 是れ勉め
昼は脚絆甲掛けで
山に入りては薪を刈り
畑に入りては耕作し
月に三五の托鉢は
雨や霰の差別なく
近くは三里四五里迄
朝に星を戴いて
暮には暗を友となし
行くも皈るも夜の道
村里 人の家に立ち
若し仏餉の志ざし
施し給へと呼ぶ声に
直に奥より繰盆に
戴き差出す嬉しさは
誰に語らん人もなし
さは去ながら乞食の
修行する身の有様は
犬に叫ばれ吠へられて
人に笑はれ謗られつ
如何なる我慢高慢も
一時に破け折れにけり
皈り来りてあら先づと
休む暇なく直様に
直日 侍者に追ひ出され
眠れば二度の警策で
肩を打たれて目を覚ませ
一解に三度の大接心
如何なる智者や学者とて
延す手足は更に無し
夜るは寒暑の隔て無く
布団一枚 柏は餅
枕を作る事もなし
夫れ朝夕の糊口には
箸にかからぬ五句(?)粥
糠 味噌汁に万年漬
腹の膨るる事もなし
偶々出逢ひし皆請(?)や
供養日やら施餓鬼斎
食念深き戒に
仏祖の金言忘れねば
満腹する事更になし
生れて里の人々に
修行風情見するなら
泣より外はなかるべし
恋しき宅の故郷に
足を留めて居るならば
此んな憂き目は無きものを
是れに引き替へ世の人は
珍味を尽して喰ひつつ
四時の衣服は節(?)を得て
碁会に茶会 花の会
諸芸 文才 闘はす
楽しき事の数々は
如何に筆紙につくすべき
併し此の身は四大とて
地水火風の和合にて
一々是れを分离して
物を言はずに何物と
少し小頸を傾けて
つらつら思案致すれば
仏と云者 更になし
鬼も大蛇も阿羅漢も
八万四千の神々も
天つ国つの神々も
是れ皆凡て我が者と
成すと成ぬの境界に
天堂 地獄と現るる
耶蘇の教も哲学も
心の外の法はなし
心外に法を求むれば
是れを外道と申すべし
高く眼を附けて見よ
三皇 五帝 釈迦 迄も
少も我見違ひなし
然るに世の人誤りて
長く上帝の奴僕とも
なるは如何にも残念と
よしや此の様に申すなら
容興(?)の歓をなす勿れ
綿々 密々 工夫して
工夫に工夫を打ならし
一旦憂へし魂を
殺し尽して其后は
修行 此処に至りなば
形に執し 名に執し
迷に 迷を 引き起し
信心 堅固の 其の人は
有らぬ限りはなき物ぞ
一と度 是れを悲憤して
求道の念の度を進め
??(□□)の為めなり 君の為め
身心財を擲つて
四句の誓ひに鞭を打ち
勉め勉めて諸大徳
勉め勉めよ諸大徳
.
.
.
.
当院に とある書物がありました
表題こそ
「雲水和讃」と読めましたが
戦前の古い文体
今は使われてない旧字体
手書きで記したことによる誤字脱字
読むことが困難でした
この度 助力を頂き
大部分が明らかになりました
ので
公開することにしました
しかしながら
ご覧の通り
不明な点が残っています
もし この雲水和讃を
ご存知の方がいらっしゃいましたら
下記まで
ご指示いただければ 幸いです
メール :大蔵院メールフォーム
電 話 :078-911-2131
.
明石の禅寺 大蔵院
経典 記事一覧
.
金剛般若経
般若心経(大本・小本)梵語
.
観音経
延命十句観音経
.
大悲呪
開甘露門
.
消災呪
仏頂尊勝陀羅尼
.
坐禅儀
証道歌
.
中峰和尚座右の銘
興禅大燈国師遺戒
.
白隠禅師坐禅和讃.
雲水和讃
.
.
© 2022 kenkozan Daizoin