開甘露門　現代語訳

開甘露門　かいかんろもん

六道輪廻からも解脱できず、
それどころか
生前に犯した重大な罪によって
叫喚地獄や阿鼻地獄といった地獄世界に落ちてしまうと、
そこから簡単には抜け出すことはできない。

この餓鬼道は決して
私たちと無縁な世界ではなく
他人事ではない。

この餓鬼道から
自他を救済するために誦むのが
『開甘露門』という経典である。

『開甘露門の世界 －お盆と彼岸の供養』　
野口善敬著　　ブログ禅

参考　
「禅宗の陀羅尼」
　木村俊彦と竹中智泰著　大東出版社

開甘露門　現代語訳

– – – – – – 破地獄偈 – – – – – –



じゃじん　にゅうりょうち
若人(じゃじん) 欲(にゅう)了知
さんし　いしいふ
三世(さんし) 一切仏
(いしいふ)
若(も)し　人が
あらゆる時（三世）における
全ての仏陀（Buddha 真理を悟った人）を
了知したいと欲するなら




いんかん　はかいしん
応(いん)観　法界性
いしい　ゆいしんぞう
一切(いしい)　唯心造
(ゆいしんぞう)
応まさに (このように) 観みるべきである
真理の世界の性質は
唯ただ 心が造り出したモノだと



– – – – – – 帰依三宝 – – – – – –



なむ じほう ふ
南無(なむ) 十方(じほう) 仏(ふ)

あらゆる世界の
仏陀（Buddha 真理を悟った人）に
帰依します




なむ じほう は
南無(なむ) 十方(じほう) 法
(は)
あらゆる世界の
法（dharma 法則・真理）に
帰依します




なむ じほう せん
南無(なむ) 十方(じほう) 僧
(せん)
あらゆる世界の
僧伽（Saṃgha 仏道を修行する集団）に
帰依します



– – – – – – 縁起衆 – – – – – –



なむ ほんす しゃきゃむにぶつ
南無(なむ) 本師(ほんす) 釈迦牟(しきゃむ)尼仏(にぶつ)

根本導師
釈迦族の聖者（お釈迦様）に
帰依します




なむ だいずだいひ　きゅうく
南無(なむ)　大慈(だいず)大悲(だいひ) 救(きゅう)苦
かんしいんぶさ
観世音(かんしいん)菩薩

至大なる慈悲で
苦しみから救い給う
観世音菩薩に
帰依します




なむ　きこう
南無(なむ) 啓(き)教
おなん そんじゃ
阿難(おなん) 尊者

仏の教えを広められた
阿難（Ānanda：ｱｰﾅﾝﾀﾞ）尊者に
帰依します



– – – – – – 焔口陀羅尼 – – – – – –



なむ さぼ ととぎゃと ぼりょきちい
南無 薩(さ)婆(ぼ) 咃哆伽(ととぎゃ)多(と) 嚩盧枳帝(ぼりょき)帝(ちい)

全ての如来が観るモノに
帰依します




えん
唵(えん)

oṃ：ｵﾝ
（真言/Mantraの感動詞）




さんもら さんもら
三摩囉(さんもら)　三摩囉(さんもら)

集つどい給え 集つどい給え




きん
吽(きん)

hūṃ：ﾌﾝ
（真言/Mantraの感動詞）



– – – – – – 施甘露水陀羅尼 – – – – – –



なむ すりょぼや　ととぎゃとや
南無(なむ) 蘓嚕婆耶(すりょぼや)　多咃伽多耶

美しい姿をされた如来に
帰依します




とじと
多姪咃
(とじと)
以下の如く




えん
唵
(えん)
oṃ：ｵﾝ
（真言/Mantraの感動詞）




すりょ すりょ
蘓嚕(すりょ)　蘓嚕
(すりょ)
流れ出よ　流れ出よ




ぼやすりょ ぼやすりょ
婆耶(ぼや) 蘓嚕(すりょう)　婆耶(ぼや) 蘓嚕
(すりょう)
もっと流れ出よ　もっと流れ出よ




そもこ
娑婆訶
(そもこ)
svāhā：ｽｳﾞｧｰﾊｰ
（真言/Mantraの感動詞）



– – – – – – 施乳海陀羅尼 – – – – – –



なむ さまんだ ほどなん
南無(なむ) 三曼(さまん)多(だ) 没駄喃

全ての仏陀（真理を悟った人）たちに
帰依します




ばん
梵(ばん)

vaṃ：ｳﾞｧﾝ
（金剛大日如来を表した種字：वं ）



– – – – – – 七如来 – – – – – –



なむ ほうしんじらい
南無(なむ) 宝(ほう)勝(しん)如来(じらい)

宝勝如来に帰依します




なむ とほうじらい
南無(なむ) 多宝(とほう)如来
(じらい)
多宝如来に帰依します




なむ みょうししんじらい
南無(なむ) 妙(みょう)色(せせせ)身(しん)如来
(じらい)
妙色身如来に帰依します




なむ こうはしんじらい
南無(なむ) 広(こう)博(は)身(しん)如来
(じらい)
広博身如来に帰依します




なむ りふりいじらい
南無(なむ) 離怖畏(りふい)如来
(じらい)
離怖畏如来に帰依します




なむ かんろようじらい
南無(なむ) 甘露(かんろ)王(よう)如来
(じらい)
甘露王如来に帰依します




なむ おみとじらい
南無(なむ) 阿弥陀(おみと)如来
(じらい)
阿弥陀如来に帰依します



– – – – – – 往生呪 – – – – – –



なむ おみとぼや ととぎゃとや
南無(なむ) 阿弥陀婆耶 哆咃伽多耶
(ととぎゃとや)
無量の光・無量の寿命を持つ（阿弥陀）如来に
帰依します




とにやと
哆膩耶哆(とにやと)

以下の如く




おみり つぼみ
阿弥唎(おみり) 都婆毘

甘露(amṛta:不老不死の妙薬・仏の悟り)により
生じるモノよ




おみりと したぼみ
阿弥唎哆(おみりと)　悉耽婆毘
(したぼみ)
甘露(amṛta:不老不死の妙薬・仏の悟り)の成就により
生じるモノよ




おみりと びきゃらちぃ
阿弥唎哆(おみりと)　毘伽(びきゃ)蘭(ら)帝

甘露(amṛta:不老不死の妙薬・仏の悟り)により
（死を）超越するモノよ




おみりと びきゃらと ぎゃみに
阿弥唎哆(おみりと)　毘伽蘭哆(びきゃらと)　伽弥膩
(ぎゃみに)
甘露(amṛta:不老不死の妙薬・仏の悟り)により
（死の）超越に到達したモノよ




ぎゃぎゃの しときゃり
伽伽耶(ぎゃぎゃの)　 枳哆伽唎
(しとぎゃり)
虚空のような名声を 授けるモノよ




そもこ
娑婆訶
(そもこ)
svāhā：ｽｳﾞｧｰﾊｰ
（真言/Mantraの感動詞）



– – – – – – 浄食加持偈 – – – – – –



じんしゅ かじ じんにんし
神(じん)呪(しゅ)　加持(きゃし)　浄(じん)飲食(にんし)

神秘な呪文（陀羅尼）の加持で
飲食を浄きよめ




ふし おさしゅ きじん
普施(ふし)　恒沙(おさ)衆(しゅ) 鬼神

ガンジス川の砂の数ほど多くの
鬼神たちに　普あまねく施ほどこす




げん かいぼうもん　しゃけんしん
願(げん)　皆(かい)飽満(ぼうまん)　捨慳(しゃけん)心
(しん)
皆が　満ち飽きる程　食し
邪慳の心を 捨て去ることを　願う




し どゆうみ さんぜんどう
悉(し) 脱幽冥(どゆうみ) 　生(さん)善道

悉ことごとくが
幽かすかな冥くらい世界を脱し
善い道を 生きる




きいさんぽう　はふじ
帰依(きい)三宝(さんぽう)　発(は)菩提
(ふじ)
三宝（仏法僧）に帰依して
菩提心（仏道を歩む決意）を発する




きゅうきん てしん ぶじょうか
究竟(きゅうきん)　得(て)成(しん)　無上(ぶじょう)覚
(が
究極に達し
この上ない（最高の）悟りの境地に
成り得れば




くんて ぶへん じんみらい
功徳(くんて)　無辺(ぶへん)　尽(じん)未来
(みらい)
その功徳は
果てし無く
未来永劫まで 全まっとうし尽つくす




いししゅんさん ずんばし
一切(いし)衆生(しゅんさん)　同法食
(ずんばし)
全ての 生命あるモノたちよ
修行・食事を 同じくしよう



– – – – – – 四句回向（施食通覧） – – – – – –



じてん きじんしゅ
汝(じ)等(てん)　鬼神(きじん)衆
(しゅ)
汝なんじら　鬼神たちよ




ごきん すじきゅう
我(ご)今(きん)　施(す)汝(じ)供
(きゅう)
我われは今　汝なんじらに供物（飲食）を施ほどこす




すじ へんじほう
此食(すじ)　遍(へん)十方
(じほう)
此の供物（飲食）を　あらゆる世界に
行き渡らせ




いしい きじんきゅう
一切 鬼神倶

全ての鬼神と倶にする



– – – – – – 八句回向 – – – – – –



いすしゅあん しゅぜんげん
以(い)此(す)修行(しゅあん)衆(しゅう)　善根
(せんげん)
此の修行者たちの
(善い結果が生じる原因となる)
善行を以もって




ほうた ぶもきろうて
報(ほう)答(た)　父母劬労(ぶもきろう)徳
(て)
苦労された父母の徳に報い
恩を返す




そんしゃ ふら じゅぶきゅ
存者(そんしゃ)　福(ふ)楽(ら)　寿(じゅ)無窮
(ぶきゅ)
生存している者は　幸福・安楽に満たされ
窮きわまり無く 長生きし




もうしゃ りく さんなんにょう
亡者(もうしゃ)　離(り)苦(く)　生安(さんなん)養
(にょう)
亡くなった者は　苦から離れ
安養国（極楽浄土）に生まれる




すいん さんにゅう しあんし
四(す)恩(いん)　三(さん)有(にゅう)　諸含(しあん)識
(し)
この世で四種の恩
（父母･衆生･国王･三宝からの恩）
を受けた者たちよ

三つの世界（三有：欲界・色界・無色界）の
者たちよ




さんずは なんく しゅんさん
三途　八難　苦衆生

悪行を重ねた者たちが 死後に趣おもむく
三途（地獄道･餓鬼道･畜生道）や

仏法に接するのが困難な
八つの状態・状況
（八難 ： 地獄･餓鬼･畜生･長寿天･聾盲　　
･世智弁聡･仏前仏後）において

苦しんでいる 生きとし生ける者たちよ




きゅうもうくいこ　せんなんす
倶蒙悔過(きゅうもうくいこ)　洗(せん)瑕疵
(なす)
倶に　過去の無知を悔くい
瑕か疵し（傷・あやまち）を洗い落とそう




じん　しゅりんぬい さんじんす
尽(じん)　出(しゅ)輪廻(りんぬい)　生(さん)浄土(じんず)

尽ことごとくが
（迷い苦しむ）輪廻の輪から抜け出し
仏や菩薩が住む清浄な浄土に生きる



– – – – – – 四句回向 – – – – – –



げん にすくんんて
願(げん)　以(に)此(す)功徳
(くんて)
願わくは　この功徳が




ふぎゅうおいしい
普及於一切

全てに
普あまねく及およびますように




ごてんにしゅんさん
我等(ごてん)与(に)衆生(しゅんさん)

我らと 生きとし生けるモノが




かいきゅう しんぶどう
皆共 成仏道

皆が共に 仏道を成し遂げますように



– – – – – – 普通回向 – – – – – –



じほう さんし
十方(じほう)　三世(さんし)

あらゆる空間　あらゆる時間の




いしい しふ
一切 諸仏

全ての仏陀（目覚めし者）たちよ




しそんぶさ　もこさ
諸尊(しそん)菩薩(ぶさ) 摩訶(もこ)薩(さ)

諸々の求道者・偉大な者たちよ




もこほじゃほろみ
摩訶(もこ)　般若波(ほじゃほ)羅(ろ)蜜(み)

偉大なる　智慧の完成よ

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